最近の研究課題

専門の研究分野は極域の電離圏・熱圏・磁気圏、特にプラズマと中性大気との相互作用、オーロラ活動に伴う大気へのエネルギー放出過程です。その中で2つの課題を紹介します。

PROJECT //  01
オーロラアーク近傍での3次元電流系と熱圏風速との関係

オーロラは、磁力線に沿って磁気圏から下向きに(地球向きに)降り注ぐ高エネルギー電子によって励起された粒子の発光です。電子の動きは即ち電流(方向は逆)で、我々はオーロラとその関連現象を電磁気学や電流系で理解しようとしてきました。電流系はジュール加熱によるエネルギー散逸やローレンツ力による運動量輸送にとって重要な役割を果たします。これらの物理過程は熱圏に作用し、粒子を加速したり温度や密度を変化させます。

上のパネルは地上からデジタルカメラで撮影されたオーロラアークのスナップショットです(即ちアークの水平分布)。その上に電流系の例を描いてあります。アークの明るい部分には上向きの沿磁力線電流があり、これは電子の下向きの運動によるものです。一方、アークより図の少し上側(この例だと極側)の暗い部分には下向きの沿磁力線電流があります。電離圏電子の上向きの動きによる電流です。水平電流(ペダーセン電流)がそれらの間を流れ、二つの沿磁力線電流を電離圏で回路として閉じています。ペダーセン電流はE×B力(E:電場、B:磁場)によって動くイオンの動きによる電流です。このイオンは弱電離プラズマである電離圏中を移動する際、電荷的に中性な粒子と何回も衝突します。その際、イオンの運動エネルギーは中性粒子の熱エネルギーや運動エネルギーに変換されます。これらのエネルギー変換によって様々な変化が超高層大気に現れますが、多くの物理機構が未だ解明されずにいます。

PROJECT //  02
脈動オーロラと熱圏風速変動

脈動オーロラ(pulsating aurora)はサブストームの後に現れる典型的オーロラの一つです。発光強度が周期3-10秒や約0.3秒で振動したり、パッチ状の構造が東向きに移動する特徴があります。発光強度の振動はオーロラを引き起こす高エネルギー電子(10 keV以上)の振動が原因です。東向きの移動は磁気圏ダイナミクスを投影した動きだと考えられています。多くの研究活動によって磁気圏での物理は理解が進んでいますが、電離圏現象には多くの未解明問題が残されています。

一般的に脈動オーロラの中でのペダーセン電流はジュール加熱によって熱圏を加熱するほど大きくありません。そのため多くの研究者は脈動オーロラ発生時の熱圏に変化はさほどないだろうと考えてきました。しかしファブリペロー干渉計を用いた我々の観測によって脈動オーロラ中にも顕著な変動があることが分かってきました。特に興味深い点は、その変動が脈動オーロラの中に現れる暗い部分に限定されていることです。